フィンテックの未来は?経済産業省が語る超スマート社会Society5.0とは

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フィンテックの未来はどうなる?

「フィンテック(Fintech)」という言葉が当たり前のように使われるようになって久しいためか、最近ではわざわざフィンテックの意味が解説されないことが増えています。

フィンテックとは、ファイナンスとテクノロジーを併せた造語のことで、「ITを利用して通貨取引の新しい仕組みを作ること」を目的としています。

ところでフィンテックが耳馴染みになったとは言え、今後フィンテックがどのように発展・展開していくかを知っているでしょうか。

今のところフィンテックの未来を明確に予想する事はできませんが、今後の発展・展開を考える際に国がフィンテックに対してどのような考えを持っているかを知っておくと良い指標になるはずです。

そこで、2017年5月に「経済産業省産業構造審議会」がまとめた「新産業構造ビジョン[PDF]」を参考にして、フィンテックがどのような存在であるかを見てみましょう。

第4次産業革命による課題解決

今後、日本の将来だけでなく世界の将来において抱える課題には以下のものがあります。日本は世界に先駆けて、これらの課題を解決する道標を保つ必要があります。

  • 少⼦⾼齢化
  • 地⽅経済・コミュニティの疲弊
  • エネルギー・環境制約
  • ⾷糧問題
  • ⽔問題
  • 健康・福祉
  • 教育

経済産業省の資料では、これらの今まで対応しきれなかった「社会的・構造的課題」が「第4次産業革命技術(Connected Industries)」の社会実装によって、より豊かな社会を実現できるとしています。

具体的には、IoT、ビッグデータなどの大量の情報を基に人工知能(AI)やAIを搭載したロボットが自律的な最適化を行うことで以下の目的を達成し、Society5.0の実現を目指すというものです。

1.潜在需要を開花させる新たな製品・サービスの創出
様々な業種、企業、人、機械、データなどがつながってAI等によって、新たな付加価値や製品・サービスを創出、生産性を向上

2.⽣産性⾰命
高齢化、人手不足、環境・エネルギー制約などの社会課題を解決

ここまではかなり抽象的な捉え方ですが、これ以上は掘り下げないので詳しくは下記資料をご覧ください。

参考|「Connected Industries」東京イニシアティブ2017|平成29年10月2日|経済産業省[PDF]

超スマート社会Society5.0とは

Society5.0(ソサエティ5.0)とは、「必要なもの・サービスを、必要な⼈に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる⼈が質の⾼いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、⾔語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」を指します。

これらを実現することを称して、Society5.0は「超スマート社会」とも呼ばれます。

もちろん、Society5.0があるということは、これまでにSociety1.0、Society2.0、Society3.0、Society4.0があったということです。

Society1.0 狩猟社会
Society2.0 農耕社会
Society3.0 工業社会
Society4.0 情報社会
Society5.0 超スマート社会

1990年代頃から現在に至るまではSociety4.0にあたり、ITの技術が発達した(高度)情報社会と言われています。

インターネットの高速化、パソコンの高性能化、スマートフォンの出現、IoTなど1990年代からの発展には目を見張るものがありますが、今後は人工知能を始めとした技術がそれ以上の革命をもたらす可能性があるということです。

⽇本としての戦略分野

このSociety5.0(超スマート社会)の実現に向けて、日本の強みや社会背景を加味した戦略分野案は以下になります。

我が国の基本的戦略の全体像
  1. 移動する|ヒトの移動、モノの移動
  2. ⽣み出す、⼿に⼊れる|スマートサプライチェーン、製造・⽣産現場における⾼度化・効率化
  3. 健康を維持する、⽣涯活躍する|健康、医療、介護
  4. 暮らす|「新たな街」づくり、シェアリングエコノミー、FinTech

ここで「暮らす」の分野に フィンテックが登場します。フィンテックは、国の基本戦略のひとつとして明確に位置付けられているということです。

フィンテック社会の実現に向けた道筋

あらゆる経済活動には⾦融取引・⾦融サービスがあり、フィンテックは経済活動全ての局⾯に登場し、そのあり⽅(信用やリスクの捉え方、それらを支える担い手)を劇的に変える可能性を秘めているとしています。

国が提示している「基本的方向性 / 目指すべき状態」は以下のとおりです。

1.フィンテック普及の前提条件を整える

  • データ融通の環境が整う
  • キャッシュレス社会が実現する
  • 電⼦決済のセキュリティが守られる

2.「お⾦」の流れを円滑にする

  • 本⼈確認がデジタルで完結する
  • ⾏政データを開放、⼿続がデジタルで完結する
  • ⾦融サービスがデジタルで完結する

3.中⼩企業等のFinTech活⽤を後押し

  • 会計・経営管理が⾃動化・効率化する
  • 出⼊⾦・資⾦管理が⾃動化・効率化する
  • 資⾦調達⼒を強化する

4.イノベーション(試⾏錯誤)を促す仕組み作り・環境整備(「⽇本版レギュラトリー・サンドボックス」の検討等)

  • イノベーションに向けた実験が促される
  • 様々な⾰新的なFinTechサービスが出現する

フィンテックと仮想通貨の関係

先んじて資金決済法の改正と上記の指針を提示したことのおかげか、日本は「仮想通貨大国」とまで言われています。

非常に残念なのは、先般のコインチェック事件が起きたことが挙げられますが、日本はこの法律とフィンテックビジョンがあるため、中国のように仮想通貨取引所が閉鎖されることはないという期待が持たれています。

※ 国は“仮想通貨”に対しては言及しているわけではないので注意

参考|FinTech ビジョン(FinTech の課題と今後の⽅向性に関する検討会合 報告)|経済産業省[PDF]

レギュラトリーサンドボックスとは

そして、先日行われた「日中仮想通貨カンファレンス#1」でも言及されていたもののひとつに、レギュラトリーサンドボックスというものがあります。

参考|レギュラトリーサンドボックスと特区構想とは?世界と日本の動き | FIN-ROUND

2018年中に日本でもレギュラトリーサンドボックスに関する具体的な動きがあるだろうと言われていました。

⾰新的なサービスの発展には社会的実証実験が不可欠ですが、そのような場合に試行できる環境(特区)を国が創設するのがレギュラトリーサンドボックスという構想です。

参考|国家戦略特区における「⽇本版レギュラトリー・サンドボックス」制度の導⼊|平成29年5月12日|山本内閣府特命担当大臣提出資料[PDF]
参考|「レギュラトリー・サンドボックス」の創設について|平成29年5⽉12⽇|⽵中 平蔵[PDF]

レギュラトリーサンドボックスでは、例えば次のような実験を行う際に関係省庁の窓口の簡素化・法的緩和などが考えられます。

  • ブロックチェーン(分散型台帳)を利⽤した電⼦的な記録で債権の発⽣・譲渡を⾏うことで、中⼩企業等の資⾦調達の円滑化・低コスト化。
  • 政府調達等において、企業の⼊札参加に必要な登記情報や契約情報などをブロックチェーンにおいて管理することにより、処理を効率化。

フィンテック以外では、自動車の自動運転やドローン飛行の手続きが簡単になる特区を設けるなどが考えられます。そう考えると、スマートコントラクトの社会実装は、そう遠くない未来だと言えます。

参考|ブロックチェーン2.0|ビットコイン2.0を理解する7つのキーワード | FIN-ROUND

Society5.0で雇用が変わる

Society5.0がもたらす未来は当然全ての人が何らかの豊かさを享受できると予想されていますが、すべてが良いことばかりではありません。

過去の産業革命と同様、ビジネスプロセスの変化は雇用ニーズと雇用のあり方にも変化を起こします。Society5.0が新たな雇用ニーズを生み出す一方、特にAIやロボットが増えることで、以下のように低賃金化または不要化につながると予想されています。

上流⼯程(経営企画・商品企画・マーケティング、R&D)
変化 職業例 予測
様々な産業分野で新たなビジネス・市場が拡⼤するため、ハイスキルの仕事は増加 経営戦略策定担当、M&A担当、データ・サイエンティスト、マス・ビジネスを開発する商品企画担当やマーケッター・研究開発者、その具現化を図るIT技術者 増加
データ・サイエンティスト等のハイスキルの仕事のサポートとして、ミドルスキルの仕事も増加(※)技術⾰新の進展スピード次第 データ・サイエンティスト等を中核としたビジネスの創出プロセスを具現化するオペレーション・スタッフ 増加
マスカスタマイゼーションによって、ミドルスキルの仕事も増加 ニッチ・ビジネスを開発する商品企画担当やマーケッター・研究開発者、その具現化を図るIT技術者 増加
製造・調達
変化 職業例 予測
IoT、ロボット等によって省⼈化・無⼈化⼯場が常識化し、製造に係る仕事は減少 製造ラインの⼯員、検収・検品係員 減少
IoTを駆使したサプライチェーンの⾃動化・効率化により、調達に係る仕事は減少 企業の調達管理部⾨、出荷・発送係 減少
営業・販売
変化 職業例 予測
顧客データ・ニーズの把握や商品・サービスとのマッチングがAIやビッグデータで効率化・⾃動化されるため、付加価値の低い営業・販売に係る仕事は減少 低額・定型の保険商品の販売員、スーパーのレジ係 減少
安⼼感が購買の決め⼿となる商品・サービス等の営業・販売に係る仕事は増加 カスタマイズされた⾼額な保険商品の営業担当、⾼度なコンサルティング機能が競争優位性の源泉となる法⼈営業担当 増加
サービス
変化 職業例 予測
AIやロボットによって、低付加価値の単純なサービス(過去のデータからAIによって容易に類推可能/動作
が反復継続型であるためロボットで模倣可能)に係る仕事は減少
⼤衆飲⾷店の店員、中・低級ホテルの客室係、コールセンター、銀⾏窓⼝係、倉庫作業員 減少
⼈が直接対応することがサービスの質・価値の向上につながる⾼付加価値なサービスに係る仕事は増加 ⾼級レストランの接客係、きめ細かな介護、アーティスト 増加
IT業務
変化 職業例 予測
新たなビジネスを⽣み出すハイスキルはもとより、マスカスタマイゼーションによってミドルスキルの仕事も増加 製造業におけるIoTビジネスの開発者、ITセキュリティ担当者 増加
バックオフィス
変化 職業例 予測
バックオフィスは、AIやグローバルアウトソースによる代替によって減少 経理、給与管理等の⼈事部⾨、データ⼊⼒係 減少

技術革新は突然やってくるわけではなく、日進月歩で変化しています。そして、この変化が止まることはありません。

そのため、雇用ニーズの変化に巻き込まれる特定の職種の人が、どれだけ「雇用を守れ!」と言っても仕方がないことです。

わたしたちは、今後起こり続けるフィンテックの未来、Society5.0(超スマート社会)による変化に対応するために、常に学び続けなければいけません。変化は今に始まったことではありません。自身の将来を考える際は新しい技術による変化も参考にしておいた方が良いですね。

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