FRBニューヨーク連銀が公開した仮想通貨に関するQ&Aの意味

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ニューヨーク連銀の仮想通貨に関するQ&A

仮想通貨をガチホ(ガチでホールド=絶対手放さない)している人は、仮想通貨の価格がまだ上げると考えている人か現在含み損を抱えている人のどちらかです。

このような人たちにとって重要なのは、世界中の金融機関や政府組織が仮想通貨に対して発表する見解や制度などの取り組みですね。中でも重視されるのは、やはりアメリカの動きでしょう。

FRB(Federal Reserve Bank)の1つニューヨーク連邦準備銀行は、仮想通貨に対する6つのQ&Aを公式サイトで公開しました。質問に答えたのは、ニューヨーク連銀が抱える経済アナリストのマイケル・リー氏とアントニー・マーティン氏です。

FRBの中で最も主要なニューヨーク連銀の仮想通貨に対する姿勢がこのQ&Aで公開されているかもしれません。

では、どのようなQ&Aなのかその内容を見てみましょう。

参考|Hey, Economist! What Do Cryptocurrencies Have to Do with Trust?   Liberty Street Economics
※翻訳は内容に影響がないように端折ったり、意訳を加えています

Q1.仮想通貨(暗号通貨)とは何ですか?

マーティン氏:「暗号通貨とはデジタル、つまり仮想のお金のことです。」

この発言で注目すべきは、FRBの経済アナリストが仮想通貨のことを”お金”だと明言していることです。2017年12月、FRBのイエレン議長は仮想通貨を「投機的な資産であり、法定通貨としての性質を持たない。」と発言しています。

参考|イエレンFRB議長:ビットコインは「極めて投機的な資産」 – Bloomberg

アメリカ政府の見解では仮想通貨を決済手段の1つとしていますが、株式や債券と同等の扱いとしており、通貨とはみなしていません。通貨とは「交換の手段」「価値の尺度」「価値の保存」を伴いますが、仮想通貨は「価値の保存」の対象にはなりません。

ところが、ここで”お金”と答えたのは単純に定義を簡略化したのか、もしくは(法定通貨ではないが)通貨としての立ち位置を担う存在になりつつあるという意識の表れのどちらかと捉えられます。

Q2.仮想通貨はお金にはない実用性がありますか?

リー氏:「仮想通貨は店舗などでの支払いを容易に行えます。

どのような支払手段であっても暗黙の信頼で成り立っています。たとえば、わたしが小切手で支払いをする場合、店舗はわたしの口座に十分な資金があると信用しなければいけません。デビットカードやクレジットカードの場合も銀行や決済システムを信用しなければいけません。

ところが、現金であればある程度の問題は解決します。それは仲介者がおらず直接支払えうためです。もちろん、現金の場合でも貨幣的な価値や中央銀行を信頼する必要はあります。」

つまり、仮想通貨であれば仲介を必要とせずに支払うことができるため、法定通貨の代替手段であるデビットカードやクレジットカードに比べて信用する媒体・機関が少なくて済むことになります(決して仮想通貨が信頼できるという話ではない)。

Q3.信用の問題を解決するために仮想通貨が進歩したんでしょうか?

マーティン氏:「決済システムの要素の1つは、決済可否の”バリデーション(検証)”です。クレジットカードやデビットカードはバリデータによって、口座に資金があるかをチェックできます。ただし、店主がバリデータを信用せずに、決済可否が疑わしいと思えば決済を行えません。

ビットコインにはバリデータがありません。その代わり、取引を検証するためにすべての人がビットコムネットワークを確認できます。技術的な詳細はセントルイス連邦準備銀行の論文を参考にしてください。」

これは単純に発行・運営主体が存在しない仮想通貨が信頼を得るために、取引データが公開されている事実を話しているにすぎません。

出典|https://blockchain.info/ja/unconfirmed-transactions

Q4.仮想通貨は違法行為にかかわることはありますか?

リー氏:「間違いなく関係している可能性が高いでしょう。麻薬取締局によると2016年は現金密輸が急激に減少しており、仮想通貨を使った輸送に移行している可能性が現れています。仮想通貨を使えば、オンライン上の違法行為が容易になります。2013年のシルクロードに関する政府の取り締まりに続いて、違法貨物の取引に使用されていたオンライン市場ではビットコインの価格が急落しました。

資本流通を管理している中国では、銀行のマネーロンダリングを懸念して銀行による仮想通貨取引を禁止しました。また、北朝鮮では金融機関等を使った経済制裁を回避できますし、彼ら自身が仮想通貨のハッキングも行っています。

先程、通貨がその価値をどう人々に信じさせているかについて話しましたが、2015年のギリシャが財政危機の際は、資本規制の懸念やユーロ圏を脱出する可能性がある中で、ギリシャの関心とビットコイン取引が急速に高まりました。ビットコインは信用が崩壊するにつれて魅力的になりました。」

こちらもこれまでのビットコインの歴史と扱われ方について事実を話しているにすぎません。

参考|ビットコイン最初の値段はいくら?仮想通貨が誕生した理由と歴史 | FIN-ROUND

Q5.仮想通貨がリアル通貨やゴールドなどの裏付けがない場合、最終的には無価値になるんでしょうか?

リー氏:「仮想通貨が現物(資産)の裏付けがないことは正しいのですが、ドルなどの通貨も同じく裏付けはありません。本来、物質に本質的な価値がない紙幣は長い間価値があると認められています。

本質的に価値のない紙幣でさえ、お金であれば「二倍の偶然性(Double Coincidence of Wants)※」の問題を半減させます。~省略~

その結果、企業がビットコインを支払い方法として受け入れるか、または拒否するというニュースによってビットコインの価格は変動します。昨年暮れに、決済会社であるスクエアが決済オプションとしてビットコインをテストすると報じられた後、ビットコインの価格は急騰しました。このように、支払い方法のオプションとして仮想通貨が普及すれば、当然価値が高まります。」

※物々交換においてお互いの要求が合う偶然のこと

長々とかいてありますが、紙幣には本質的な価値が無いこと、また仮想通貨も同じではあるが仮想通貨を決済手段として受け入れる企業が増えるほど価値は高まると話しています。

Q6.仮想通貨は将来のお金になりますか?

マーティン氏:「すでに確立されている他の支払い方法、つまり現金、小切手、デビットカード、クレジットカード、PayPalなどとの競争力に依存します。仮想通貨は信頼できない環境での決済問題を解決することは間違いありませんが、少なくともアメリカや他の先進国では解決が必要な問題ではありません。それよりも他の問題があります。1つはスケーラビリティです。多くのバリデータを処理するには時間やコストがかかり、膨大な(電力)エネルギーが消費されます。

また、直近では仮想通貨の価格変動が大きいため通貨としては役に立ちません。このボラティリティはビットコインの特徴で、需要の変化に対応してビットコイン供給を調整する中央銀行が存在しないため、ビットコインの価値は急激に変動します。すべてがビットコインで値付けされた世界では、インフレと経済活動の大規模な変動につながります。対照的に、FRBやECB、日銀など多くの中央銀行は、財政と物価安定を促進するための”弾力性のある”通貨の提供を目標としています。

仮想通貨で提供される信用証明は、支払い方法の利便性を犠牲にしています。私たちが何も信用せずにディストピア(ユートピアの反対)の世界に住んでいれば、ビットコインは既存の支払い方法を支配するかもしれません。しかし、人々は支払いを処理するのに金融機関を、お金の価値を維持するのに中央銀行を信用するこの世界では、ビットコインは既存の決済手段ほど便利ではないようです。

ビットコインなどの仮想通貨は、スケーラビリティと利便性を向上させようとしています。もしそうなれば、将来仮想通貨のうちの1つが現在の支払い方法と競合する可能性はあります。しかし、金融機関などの信頼が完全に欠如している前提で機能するよう設計された支払い方法が本当に必要なのでしょうか。」

マーティン氏は、仮想通貨が抱えているスケーラビリティとボラティリティの問題が解決したとしても、現在の正しく整備された通貨制度の中で仮想通貨が受け入れられるかどうかには懐疑的な見方を示しています。

仮想通貨に対するQ&Aを読んだ感想

ざっと読んだ限りでは、ニューヨーク連銀の経済アナリストのマイケル・リー氏とアントニー・マーティン氏の話は、仮想通貨に対する一般論を述べているだけで革新的な発表というわけではありません。

仮想通貨を全面的に否定するわけではありませんが、現在の通貨も長い時間をかけて信頼を築いたため存続しているとしつつ、先進諸国にとっては今後も仮想通貨の必要性に疑問を持っています。

ただし、仮に発展途上国において全面的に仮想通貨が使われるようになった場合、ワールドワイドに繋がった経済が影響を受けないわけではありません。

今後仮想通貨がパッと消えてしまうことはないとは思いますが、専門家でも曖昧な表現を多用する通り、どのように既存の法定通貨と共存していくのか明示できる人はまだいないでしょう。

Liberty Street Economicsの「Hey, Economist! What Do Cryptocurrencies Have to Do with Trust? 」文末には免責事項として、マイケル・リー氏とアントニー・マーティン氏の意見がニューヨーク連銀やFRBの公式見解を反映しないことが記されています。

ちなみに、以前FRBがデジタル通貨「フェドコイン(中銀デジタル通貨)」の発行を検討しているというニュースが流れていましたが、こちらはどうなったんでしょうか。

参考|FRBのデジタル通貨構想「フェドコイン」とは?|2017年|研究員の時事解説|ナレッジ&インサイト|NRI Financial Solutions

※画像について
By Michael from New York City (Federal Reserve Bank of New York Building) [CC BY 2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

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